代表コラム
「アイスショーと私」

  • vol.06
    フィリップ・キャンデロロ<5>

「この方、どう思いますか?」外務省の担当者から1通の在留資格認定証明書を見せてもらいました。具体的な国名は控えますが、アジアの国で職種は「Dancer」と書いてありました。職種を偽っていかがわしい仕事をしに不法入国する人達の例を見せてくれ、厳しくチェックする必要があるとのことでした。当時私としては、オリンピックでメダルを獲った人達とそのような怪しい人達と、同じ窓口で受付けること自体何かおかしいと思いました。したがって、申請に来る人達も背広姿の人あり、ラフな格好の人あり、やくざっぽい人ありと千差万別、待合室は何とも言えない特別な雰囲気でした。

次に、日本スケート連盟にも協力をお願いし、村主章枝、荒川静香、恩田美栄、田村岳斗、竹内洋輔(敬称略)と当時の日本のトップスケーター5名の出演も決定しました。

開催日を迎え、入場者は全体の6割ぐらいの入りで、空席がかなり目立ちました。フィリップに大儲けしているのではないかと疑われていたこともあり、私としては招待客で埋めようとせず、極力押えて現状をありのまま見せた方が良しとしましたが、現実を目の当たりにすると、やはり出演スケーターには申し訳ないという気持ちになりました。

ショーが始まり、フィリップは予想通りの素晴らしい演技を見せてくれました。他のスケーターもプロとして来日するのが初めとなるわけですが、アマチュア時代とは一味違う、全員魅せる演技の連続でした。また、アクロバットチームの驚きとユーモアたっぷりの演技、更に、生演奏や生ボーカルでのオープニングやフィナーレ、まさにショーならではの内容に、空席があるのを感じさせないような拍手をいただきました。日本選手達(当時はまだ誰も世界のメダルを獲っていませんでしたが)も皆それに引っ張られるようにいい演技を見せてくれました。この一体感が、エキシビションとは違うアイスショーの世界なのか・・・・私の中で熱いものがこみ上げてきました。

城田さん(当時、日本スケート連盟強化部長)からも、「世界のトップスケーターと一緒に滑らせてくれてありがとう。うちの選手にもいい経験になったはず。」と言われ、ショーというイベントに留まらず、選手強化にも繋げられる・・・・。私の心の中で、はっきりとした目標が見えた瞬間でした。(次号へつづく)

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